2021年09月09日

『山本七平と「仕事の思想」』(PHP研究所)などのお知らせ

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このような状況でありますから、それはもう今夏において愉快な想い出などはほぼ無いわけです。しかしながら、幸いなことに一つだけ、麗しい記憶になっている出来事がございましたあります。それは何かと言いますと、某テレビ番組の視聴者プレゼントに当選したということなのですね。そのプレゼントというのが凄い、何と烏賊が二杯なのです。烏賊?はは、そのような海鮮など近所のスーパーマーケットに売っとるよね、とお思いの方もおられることでしょう。しかし、その認識は正しいとは言い難い。私が当選した烏賊というのは、あの白烏賊なのです。旬の白烏賊・・・その美味しさを知る者は、人生の勝者と断言して良いでしょう(知らない者が敗者とは申しておりませんので、お怒りにならぬよう)。かくして、自宅に届いた旬の白烏賊は、刺身、唐揚などにして食みました。めっさうまい。某テレビ番組に感謝する次第です。

烏賊、もとい、以下、幾つかのお知らせを記します。

1. 『山本七平と「仕事の思想」』(PHP研究所)発売中

一言で申し上げると、これまで出版させていただいた一般書の中でも、最も思い入れのある一冊になりました。内容は、タイトル通り、評論家として八面六臂の活躍をされた山本七平さんの「仕事の思想」を、私なりにまとめ、補強し、一貫した論として形成し直したものです。

山本さんに関して書かれた本は、既に結構な数が出版されています。しかし、本書の内容は、他のいずれの本とも被るものではないと思います。山本さんは、ベンダサン時代の比較文化論や、「空気」の研究などが極めて有名ですが、本書は、彼が生涯にわたって考究しながら、一貫した議論としては未完成だった「仕事」の思想史を論じたものです。具体的には、『勤勉の哲学』、『日本資本主義の精神』、『近代の創造』などで提示された日本における「仕事」の思想史を、私の視点から整理、描出しました。

日本における「仕事の思想」に関して、山本さんが論じたものでは、鈴木正三と日本資本主義の精神に関するものが最も有名、かつ影響力を持ったものと思われます。これについては、多くの本や論文が言及しています。しかし、この話に関して、内在的批判として有効性を持つものはほとんどみたことがありません。それは、山本さんの正三論は、不干斎ハビアンの思想分析の延長線上にあるもので、彼の正三論をウェーバー的な議論の中で理解し、論じることは、全く正しくないからです。また、彼の正三論は、石田梅岩と石門心学の話と密接に関連するもので、こちらにも触れなくては話になりません。

また、山本さんの石田梅岩・石門心学論は、『近代の創造』における渋沢栄一論に接続されています。このことも、今に至るも全く論じられていません。また、山本さんの渋沢論は、彼の江戸時代観を知る上でも欠くべからざるものであり、今こそ正しく理解されるべきものと思っています。

本書は、あえて単純化すれば(そして身の程を知らない表現をするならば)、山本さんの「不干斎ハビアン・鈴木正三―石田梅岩―石門心学―渋沢栄一」という思想史の議論を、私なりに完成させる試みでもあります。わずか240ページほどの本ですが、これまでの石門心学研究の全てを注ぎ込むつもりで書き上げました。石門心学を取り扱った章では、山本さんの議論を補強する材料として、増穂残口などの(あえて平田篤胤の表現を借りれば)俗神道からの影響についても、検討、考察しています(このテーマについては近いうちに、一本の論文としてまとめるつもりです)。

文章や表現は可能な限りわかり易くあることを心掛けましたが、内容については専門書にも決して負けないものになっていると確信しています。山本さんの思想史の議論のみならず、広く江戸思想史に関心をお持ちの方に、是非ともお読みいただきたいと思っています。宜しくお願いします。

2. 『明治維新 偽りの革命』(河出文庫)発売中

早速嬉しいご感想など、届いております。お読み下さった皆様、有り難うございます。『明治維新という幻想』に比べると、風刺錦絵の数も増えておりますので、それだけでも楽しんでいただけるのではないか、と思っております。まだたくさん売ってありますので、書店さんなどで一度お手に取っていただければ幸いです。

3. 石田梅岩の現代語訳本について

現在、梅岩の著書『都鄙問答』・『斉家論』と、『石田先生事蹟』の現代語訳本を作ろうと模索中です。私としては、これを自費出版で出したいと思っています。「現代語訳・原文・影印」の三部構成に、詳細な注釈と解説を付したものが理想です。現代語訳は終わっているので、あとは注釈と解説を地道に作成するのみです。

梅岩の「厳密な現代語訳本」は、おそらく商業ベースに乗せるほど需要はありませんし(中公文庫から『都鄙問答』の現代語訳が単行本として出てますので、やや不正確な箇所もありますが、梅岩のことを大まかに理解するには彼の本で良いかと思っています)、またそれ以上に、適当に商品として消費されていくのは望むところではないので、手売り中心で、本当に関心のある方々にお届けしたいと思っています。その際に、自費出版が最善と結論付けました。進捗は、可能な限りこのブログでも告知していきます。

森田健司
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2021年08月15日

『明治維新 偽りの革命』(河出文庫)発売中

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いつも通り当ブログでのお知らせが遅くなってしまいましたが、8月5日に新刊が発売されました。

森田健司『明治維新 偽りの革命』(河出文庫)

新刊とはいっても、実は2016年に出した『明治維新という幻想』(洋泉社)の増補改訂版です。しかしながら、その増補改訂が相当なもので、ほとんど全編に手が入っていることもあり、気持ち的には全く違う本です。戊辰戦争を中心としていわゆる明治維新を取り扱ったものですが、細かい説明が増え、また戊辰戦争関連の風刺絵の数も多くなっています。

なお、最終第5章は完全書き下ろしで、ここが書き手としては最も読んでいただきたい箇所です。章、及び節のタイトルを貼り付けておきます。

第五章 最大の思想的問題「攘夷」の行方
第一節 新政府の「師」玉松操の慨嘆
第二節 「討薩檄」が指弾した新政府の攘夷
第三節 神戸事件と堺事件――新政府の卑屈な外交
第四節 濫用された大国隆正の「大攘夷」思想

思想史学を専門とする者として、明治維新について書くならば、いつか玉松操と大国隆正については言及したいと思っていました。今回、河出書房新社さんがこのような加筆をお許し下さったことで、その願いが叶った形です。また、神戸に住む者として、神戸事件について少しでも記せたことも嬉しく思っています。第5章が付加されて、この本は本当の意味で完成しました。宜しければ、一度ご覧下さい。

森田健司
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2021年04月04日

『なぜ名経営者は石田梅岩に学ぶのか?』韓国語版など

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明けましておめでとうございます(*注:本日4月4日)。半年に一度の更新としよう、などという決まりを作ったわけでもないのですが、結果として半年ぶりになっているので、おそらく目に見えぬ天の理が私をして怠惰な者とせしめておるのでしょう。それはともかく、スマホの「pho(ne)」の表記は「ホ」なのに、フィーチャー・フォンのそれは「フォ」ってどういうことなのか、と先日思い悩みました。必要なのは柔軟な頭。そういえば「live」も「ライヴ」より「ライブ」の方が増えてきたような。先祖返りの猛追。

1. 『なぜ名経営者は石田梅岩に学ぶのか?』の韓国語版刊行

私が横臥している間に、2015年にディスカヴァー・トゥエンティワンさんから出した『なぜ名経営者は石田梅岩に学ぶのか?』の韓国語版が刊行されたようです(出版社はMaekyung Publishingさん)。私は全く韓国語がわからないのですが、大変嬉しく思います。翻訳して下さった方、出版社さんと関係者の皆様に心より感謝申し上げる次第です。なお、本文は全く一緒ですが、著者メッセージだけ新規に付加されていると思います。

2. 『日刊県民福井』(2021年1月6日・7日付)にコメント

『日刊県民福井』の特集記事「アマビエ・ヒストリー」に、私のコメント(と写真)が掲載されています。3日連続の記事ですが、その第2回「庶民の遊び心を刺激」と第3回「江戸時代ほぼ”無名”」(2021年1月6日と7日)の分です。内容はタイトル通り「アマビエの歴史」で、なぜ有名になったのか、瓦版版行当時はどうだったのか、など色々書かれています。

3. 『東京新聞』(夕刊・2021年2月3日付)にコメント

コチラは『日刊県民福井』の「アマビエ・ヒストリー」3回分の要約版のようです。タイトルは「アマビエは江戸後期のフェイクニュース?」。私のコメントが載っています。

森田健司
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2020年10月12日

過ぎ去りし夏と諸々の覚書

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いつの間にやら終わっていた夏、という表現がこれ以上相応しい夏はあっただろうか、と言いたくなるほどの何もない夏でした。大学にもほとんど行けなかったわけですが、私にとってちょっとした発見があったので、ご報告いたします。それは何かと申しますと、ズバリ、ミンミンゼミです。今年、奉職16年目にして、勤務校キャンパスで初めてミンミンゼミを見付けました。

関東や東北の方は、「それのどこが驚くべきポイントなのか」と訝しむかも知れませんが、近畿においては、ミンミンゼミは疑念の余地なくレアキャラです。ごく限られた場所でしか見られない種なのですね。今年の8月下旬の夕刻、そのオスを見付けたわけです。しかし、全然周囲に人がいなかったため、私はこの感動を分かち合うこともできず、静かに帰路についたのでした。悲哀。終わり。

1. 『郷土史大系 宗教・教育・芸能・地域文化』(朝倉書店)刊行

めちゃくちゃ分厚く重い本で、情報量も凄まじい一冊です。私は、「心学」の箇所を担当させていただきました。4〜5年前に書いた原稿だったような気がします(記憶も曖昧)。民衆文化に関心を持つ方は、一度ご覧になって下さい。

2. PHP研究所『衆知』(2020年9-10月号)に記事

タイトルは「非常事態を生き抜く石門心学――石田梅岩『斉家論』より学ぶ」。カラー7ページで、ビジュアル面も豪華です。梅岩というと『都鄙問答』の話になってしまいがちですが、この記事で取り上げたのは『斉家論』のみです。コロナ禍と石門心学を絡めた記事で、ちょっと珍しい内容かも知れません。

3. 『北海道新聞』(2020年9月27日付)にインタビュー記事

日曜版の「時を訪ねて」というページに掲載いただいています。テーマは廃仏毀釈です。触れるのが容易ではないテーマですが、これもちょっと珍しい観点でお答えしています。清水寺の千体石仏群の大きな写真がインパクト大です。黙して語らず、されども言葉以上に雄弁なり。

4.「歴史秘話ヒストリア」(2020年9月2日放送)に出演

テーマは、「危機は海からやってきた 蒙古襲来とペリー来航」。出演と言いましても、私のパートは昨年放送されたペリー来航の回と同じものです。つまり、蒙古襲来の回と「2 in 1」になったバージョンでした。より詳しくペリー来航の真実を知りたいという方は、是非とも『現代語訳 墨夷応接録』をお読み下さい。宣伝です。

森田健司
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2020年08月13日

BSテレ東「大江戸かわら版ワイドショー」再々放送のお知らせ

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久し振りの更新かつ突然の話ではありますが、2017年に放送されたあの「大江戸かわら版ワイドショー」がまたも放送されますので、その件をお知らせしたいと思います。

BSテレ東「大江戸かわら版ワイドショー」
2020年8月16日(日)19時00分〜20時55分

2017年7月、2018年1月に続き、3度目の放送です。しかも、今までで一番良い時間帯をゲットしてのブロードキャスティングということで、これはもう色んな意味で素晴らしいことだと私は思うのです。まだご覧になっていない方はもちろん、今回が3回目になる方も是非ご覧下さい。

そして。瓦版ってオモロイね、もっと見てみたいなあ、となった方は、私めの最新刊『奇妙な瓦版の世界』(青幻舎)をお買い求めいただけると幸せになると思います(主に私が)。amazonさんや、リアル書店さんなどでご検討下さい。

他にも書いておきたいことがあったような気がするのですが、それはまた今度にしたいと思いますので、次回更新はかなり近いうちに行われると思われます。ほんまかいな。

森田健司
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